ローズマリー

こんにちは、MIZです。いつもお疲れさまです。
書いているうちに盛り上がってしまいまして、文字数は約3000字になりました。カウントはしておりませんが、書き終えまして、少し長くなったかと思ってしまいました。

「ローズマリー」

自分だけが食べるものを用意するのならともかく、自分以外の人の分までも作るとなると、料理はかなり大変である。主婦とはいえ、料理に関しては上手い下手があって当然で、得意、不得意もある。下手で不得意であるにもかかわらず、家族の分まで作らなければならないこともある。また、作ったとしても、失敗することだってあるはずだ。失敗すれば、材料がダメになるし、時間は無駄になるし、後片付けがとても面倒である。
召し上がる側は食べるだけだから楽なもので、作る側の苦労をわかろうとしない。まずいものはまずい。文句を言うことが相手のためになると思っている。
ところで、馬鹿げた話ならいくらでもある。
落葉樹はすっかり葉を落とし、じっと寒さに耐えている。朝日が雲の間から差し込み、外の広い世界を明るく映し出している。光の反対側にはうっすらと優しい影が自らの存在を主張し、新しい日の到来をあらゆる生物に知らせている。光と影、二つが一緒になって、自然について知ることができる。
日頃よく利用しているスーパーマケットの入り口はいつもキレイで、来るたびに気持ちがよくなる。誰かにいらっしゃいませと声をかけられるかけられているわけでもないのに、お店全体から、社会から歓迎されているような心持ちになるのだ。自動ドアが開き、風除室の中へ入る。カートを列から取り出し、赤色の買い物カゴをカートにセットする。これで用意万端である。お気に入りの財布はバックの中にきちんと入れてある。
できれは野菜コーナーから回りたいところなのだが、自分がいつも利用している入口からは遠いところにあるので、仕方なくパンコーナーのところから買い物を始める。
いろんな菓子パンがおいしそうに陳列棚から声をかけてくる。いかがでしょうか、と。声を掛けられているわけでもないのに、どうか選んでくださいと訴えてくるのである。そうして選んで家に持ち帰り、腹ペコな状態で食べるバンはとてもおいしい。
おいしそうなパンを見ていると、横目にチラリと、見慣れた雰囲気の人物が映る。こちらを見ているようだ。たぶん知っている人である。こういうのは、なんとなくわかる。
「あら、こんにちは。お元気ですか?」知り合いが声をかけてくる。里美さんだ。すっかりママさんである。
「おはようございます、いつも通りですよ。」
里美とは数年前に知り合ったばかりである。新興住宅地に一軒屋を立てて、家が近所なものだからちょくちょく顔を合わせるようになった。ご近所なのなので、なくべく愛想よく、ご挨拶くらいは心安くできる
ような関係にしていきたいと思っている。けれど、仲良くしすぎると。ちょっとしたことで羨しがられる
ので、私生活についてはあまり喋らないように心がけている。
「ほんと、最低なのよ。聞いてよ。」里美はうんざりした様子で話し掛けてくる。ストレスが溜まっているのだ。「旦那がね、あの野郎がね、もうぶん殴ってやろうかと思って。」
「えぇ、そんなに大変なんですか?」私は相槌をうつ。
「大変なんてもんじゃなくてね、昨日私が、卵のオムライスを作ったのね。で、卵料理って結構難しいじゃん? 少し焦げたところがあったらしいのよ、ほんの少し。そんなの別に、普通に食べればいいじゃん? こっちがせっかく作ってるんだから。そうしたら、あの男、こんなもん、食えん、だってさ。もう、ふざけんなと思って、小さな子どもじゃあるまいし。それで、本当に、食べないの。で、もう、絶対作らん、と思った。」里子は言った。腹の立つことがあったのである。
この人も苦労しているんだなと思った。
男女が生活していれば、食事の用意をするのは女性になるのが自然である。男がやる気になって料理について研究すると、最初はいいけれども、やがて迷惑になる。だからといって、何も関心を示さずにただ食べるだけというのではつまらない。たまには家事を手伝ってほしいという思いから、たまには料理を作ってほしいと感じる。一人で黙々とやるのはさみしい。
「黙って食べればいいのにね。」私は相槌を返す。
「だから、もう、腹が立って、腹が立って、しょうがなかったのよ。会社で溜めたストレスを家庭に持ち込まないでほしいわよ。」里美の怒りはおさまらない。
今日は、お酒を買うんだっけ。
安い発泡酒、1日1本。飲むのは旦那だけ。私は飲まない。だいたい、人が生きていくためにアルコールは必要ない気がする。だからといって、全く飲みませんでは社交的ではないから、健康のためにも冷蔵庫に1本は置いておくようにしている。
里美は気の済むまで喋って、どこかへ行ってしまった。
あぁ、くたびれましたよ。
苦労話に付き合ったあとは、お買い回り再開である。他所の家の旦那の話というのは、だいたいが馬鹿げた話である。嘘のような本当の話だ。そして、笑いながら聞いていると、そのうちに自分の身に降りかかる。だから、おかしくても、笑えない。
買う食材は考えてあるので、迷わずに店内を回る。順路とは逆だが、取り忘れる物はない。食パン、菓子パン、パスタ、海苔、秋鮭、納豆、焼きそば、お豆腐、白菜、長ネギ、ぶなしめじ・・・。
そして、今日は今までに試したことのない調味料を買おうと思っている。パスタやスープに入れるための薬味だ。考えているのが、ローズマリー。
えぇ、ローズマリーね。これにしようかしら、お値段もお手頃ですしね。
それとも、ナツメグ。なんだか、お名前が人の名前みたいですね。ナツ、メグミ・・・面白くない冗談を考えてしまいますよ。しかし、肉料理はそんなに得意でありませんので、別のものに致します。
本当に、何にしようか、選ぶのに時間がかかってしまうほど種類がある。だから、スーパーマーケットで買い物をしていると楽しいのかもしれない。
そうして、少しだけ迷って、ローズマリーを買い物カゴに入れる。予めローズマリーを買おうと決めていたのだ。でも、陳列棚の前まで来ると、少しだけ迷ってしまう。ほんの少しだけ。
買い物カゴはいっぱいになっいる。長ネギが買い物カゴから端乱している。長ネギはスープにいれるととてもおいしいし、薬味にも使える。そして、長ネギを買うと、買い物をした気分になる。
これで買い忘れはないはずである。あとは、レジに並ぶだけだ。クレジットカード清算を利用するから、只でさえ混雑している午前中のレジで、忙しく小銭や紙幣を用意する必要はない。本当に便利な世の中である。
ほしいものがあれば買えばよろしい。
しかし、卵料理を作っていて、少し焦がしてしまい、旦那から「こんなもん、食えん」と言われたら、どれだけお金を持っていたとしても、そんな物は何の意味をも果たさずに、只むしゃくしゃした気分になってしまうだろう。
あるいは、ローズマリーを使って上手に料理をすることができるくらいになれば、そもそも旦那から「こんなもん、食えん」などと言われないのかもしれない。(完)