小説 野球部で汗を流す女の子

「野球部で汗を流す女の子」

著者:MIZ

よく晴れた日の午前中の出来事である。その日は本屋にコミックスを買いにいく用事があった。

僕は高校生。自転車に乗って、住宅街の道路を通っている。そんなに広くない道だ。

『あぁ、いい天気だよ』と思っていると、ふと、後方から自転者の気配がする。いちいち振返らないが、音が聞こえてくるようで、すぐにわかった。向こうは急いでいるようである。

方向は一緒のようで、すぐに追いつかれる。

女の子だ。自分と同じ学校の制服を着ている。ブラウスにスカート。知っている子だ。彼女は野球部に所属し、スポーツをしている。肌は小麦色に焼けている。

自分はというと、肌は白子のように真っ白である。室内にいる時には普通の色に見えるが、外に出ると、病的なくらい白いと感じてしまう。

彼女は健康で、僕は不健康。

彼女は僕の隣を勢いよく通り過ぎていく。加速しているような気がする。もしかすると、心の中でこう思っているかもしれない。『あぁ、ちんたら走っているよ』と。

彼女は猛スピードで自転車をこいでいるし、僕からすれば、今になって、ペースを上げるわけにはいかない。

彼女はどんどん先へ行く。自転者の後輪と共に彼女の背中とスカートが僕の脳裏に焼き付く。そうして、すぐにすっかり見えなくなってしまう。

僕は本屋の駐輪場に到着した。駐車場を見るとガラガラで、繁盛していないように見える。まだ午前中だからなのかもしれない。

目当ての本を探しに、店内へ入る。大体どこら辺にあるかはわかっている。僕はまっすぐ目的の本がある棚へと向かう。

けれど、おかしい。本がない。自分が楽しみにしていたコミックがないのである。
あぁ、残念だ、と思っていると、彼女が店内に入ってくる。

『絶対に、おかしい』と僕は思った。僕の方が追い越されたはずなのに、僕の後から入ってきたのだ。

そうして、彼女は偶然友人と出会ったのか、待ち合わせをしていたのかはわからないが、友人の女の子と2人で話している。会話の断片が聞こえてくる。

「だって、うちの先輩、ほんの少しでも遅刻するとうるさいんだから・・・。」
彼女の健康そうな声が僕の耳に届く。

僕は、盗み聞きしているようで何となく居心地が悪くなり、今いる場所から離れ、雑誌が並べられている棚の前に移動する。目の前には様々なスポーツの雑誌と共に野球の雑誌が陳列されている。体格のよい(プロ?)野球選手の写真がアップで表紙に写っている。

かっこいい。羨ましい。

目当てのコミックはなかったし、だからもう本屋に用はない。僕は外に出る。

外の空気は新鮮である。僕は少し遠くを見る。空は青色に澄み渡り、光り輝いていた。(完)

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